ESAの産官学民連携 <第2弾>
制約条件を乗り越えるカギ “企業共創”【後編】
「循環」「共生」というコンセプトに基づき、産官学民の共創を促進し、持続可能な社会の実現を目指すエコシステム社会機構(ESA;イーサ)。どのようなアプローチで主体・領域を超える協働を生み出そうとしているのか、具体的な活動を通してご紹介します。
第2弾は「制約条件を乗り越えるカギ “企業共創”」です。
今回の記事では、これまで取り組んできた自治体・企業共創の事例についてご紹介します。
【事例】神戸市×企業 水平リサイクルの実現に向けた仮説検証
ESAの行政会員である神戸市では、市内にエコノバ(資源回収ステーション)を設置し、資源回収と地域コミュニティの場の創出の両面に取り組んでいます。資源出しに来たついでに気軽に立ち寄れる交流スペースを設けており、「世代を超えて新たな交流が生まれる拠点」を目指しています。
ESAの企業が所属するサーキュラーエコノミータスクフォース/J-CEP(※)では、神戸市のエコノバ(資源回収ステーション)と連携して、サーキュラーエコノミーに関するさまざまなプロジェクトを行ってきました。
(※)ESAのサーキュラーエコノミータスクフォースは、ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(略称:J-CEP)で行われてきた活動を継承しています。

そのひとつとして今回ご紹介するのが、ペットボトルキャップの回収・再生プロジェクトです。
このプロジェクトでは、将来的な水平リサイクル(使用済みの製品が同じ用途の製品に生まれ変わるリサイクル方法)の実現を目指し、市民がエコノバ(資源回収ステーション)に持参した資源の回収から再生までの一連のスキームの検証を行いました。
検証のポイントのひとつは、市民によって分別・洗浄された良質な資源を回収することが、リサイクル時の工程を簡略化するなど、事業の持続性につながるか、という点です。また、本プロジェクトでは、水平リサイクルは行わず、ペットボトルキャップから爪切りホルダーキャップやプチプチ®の試作品を作製し、製品への利用可能性を検証しました。

参画自治体、企業の役割
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【回収】神戸市、アミタホールディングス㈱
・神戸市のエコノバ(資源回収ステーション)でペットボトルキャップを回収
・アミタホールディングス(株)は、神戸市と連携し、MEGURU STATION®のノウハウを活かしてエコノバ(資源回収ステーション)の運営及び拡大展開の支援を実施 -
【光学選別】三井化学㈱
回収したペットボトルキャップをメカニカルリサイクル実験場の光学選別装置にて色(白色と雑色)と素材(ポリエチレンとポリプロピレン)ごとに選別
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【リペレット】日本山村硝子㈱
白色・雑色と素材ごとに分別された4種類のペットボトルキャップを金属検査機に通したあと、粉砕・溶融・押出の工程を経て再生ペレットへ加工
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【物性測定】三井化学㈱
再生ペレットの物性を測定し、貝印(株)、川上産業(株)に添加剤配合などを提案
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【成形(ポリエチレン)】川上産業㈱
・ポリエチレンの再生ペレットは川上産業(株)の製品であるプチプチ®へと加工し、ノベルティ商品(プッチンスカット)を作製
・ノベルティ商品(プッチンスカット)のプチプチ®の原料のうち30%が本プロジェクトで回収したペットボトルキャップ由来 -
【成形(ポリプロピレン)】貝印㈱
・ポリプロピレンの再生ペレットは貝印(株)の製品である爪切りを覆う樹脂製のホルダーへと加工
・爪切りホルダーの原料のうち30%が本プロジェクトで回収したペットボトルキャップ由来
検証の結果、市民の協力によって分別・洗浄された資源を回収したことで、従来のリサイクル工程で必要であった洗浄工程を省いて試作品を作製することができました。
一方で、異物混入が発生したり、日用品として流通させる際に、用途によっては異物・汚れ・匂いの除去、物性安定性などが問題となったりするなどの課題も明らかになりました。
このようにESA(サーキュラーエコノミーTF/J-CEP)では、地域循環の事業スキーム構築等の仮説検証に、複数の企業そして地方自治体、市民とともに取り組んでいます。
神戸市のエコノバ(資源回収ステーション)では、プラスチックの再資源化に取り組むと同時に、資源出しをきっかけに交流が生まれる仕掛けが提供されています。地方自治体や生活者の目線が入ることによって、資源回収の視点に加え、地域全体のウェルビーイング向上にも資する取り組みに、企業がかかわることも可能となります。
会員を募集中!
ESAでは、企業・団体、地方自治体の皆様を広く募集しています。
共創による新規事業スキームの創出に関心のある企業・団体、地方自治体の皆様、ぜひご入会をご検討ください。
お問い合わせ:ESA事務局 info@esa.or.jp