<事務局座談会>
中央省庁メンバーが語るESAの可能性
「自治体と企業のマッチングだけでは、本質的な公民連携は実現しない」
—— ESAには、厚生労働省、環境省、総務省といった中央省庁の職員(OBを含む)10名が、有志で事務局運営に参画しています。省庁の枠を超え、個人の思いを持って集まったメンバーは、どのような未来を描いているのでしょうか。
今回は、参画者のうち厚生労働省・環境省関係者の4名で、ESAで活動する中で感じていることについて、率直に語り合ってもらいました。
座談会メンバー
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ESA統括ディレクター
早稲田大学法学部 教授 / 元環境省事務次官
森本 英香
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ESA事務局長
厚生労働省 社会・援護局 地域福祉課長
野﨑 伸一
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環境省
環境再生・資源循環局 資源循環課 課長補佐
田中 宏季
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環境省 近畿地方環境事務所
環境対策課
蝦名 裕一郎
構造的ギャップを超える—ESAが目指す公民連携の新しい形
森本
ESA立ち上げから1年半、皆さん、活動にかかわってどんなことを感じていますか?
野﨑
自治体や企業の皆さんとコミュニケーションをとる中で、気が付いたことがあります。
自然やコミュニティなど、地域に存在する資源は自治体ごとに大きく異なります。そのため、自治体が抱える課題の個別性は非常に高いのが実情です。一方で企業側も、CSRや実証フェーズであればまだよいのですが、それを超えてビジネスモデルにつなげようとすると、個々の自治体に合わせて事業展開をすることとなり、ハードルが高くなります。この構造的なギャップにアプローチしなければ、実装フェーズでの公民連携はうまくいかないことを強く感じています。
蝦名
いわゆる自治体と企業のマッチングプラットフォームって、既に手元にある・見えているものをベースとするので、どうしても短期的な視点となってしまうと思うんです。ビジョンがなく、場だけをつくってもうまくつながらない。
ESAには、自治体も企業も、企画政策、福祉、環境など幅広い部署の方が参加しているのが面白いところだなと思っています。中長期かつ領域横断的なテーマに取り組む総合政策・企画部門の方や、企業の企画・開発部門の方が参加しているので、既存の商品・サービスに限らず、幅広い視点で連携の可能性を検討できます。
個々の自治体や企業だけで地域課題に取り組むには限界があり、かつそこにはチャンスもあると思いますが、ESAはその領域にチャレンジしていける可能性を秘めていると思っています。
野﨑
公民の「協働の土俵」と私たちは表現していますが、自治体と企業、双方が乗りやすいモデルづくりに挑戦していきたいと思っています。これは個々の会員のニーズに応えていくというより、地域を舞台として、少しでも多くの会員が参画できるモデルをつくっていくイメージです。
田中
コミュニケーションを丁寧に行うために、会員同士が実際に会う機会をつくることも重要ですね。意見交換をすることで徐々に醸成されていくものもある気がします。
ESAは、全会員が参加する「イノベーションプラットフォーム会議」*を年に数回開催していますね。
蝦名
「何かできたら良いね」というレベルではなく、まず課題を見つけ、どの方向で走るべきかを一緒に考える。その中で、企業など他の主体のかかわりしろを見出し「この領域について参画しませんか?」と具体的に提示していく。共創による事業スキームをつくり、それを開くこと・適切につないでいくことが、ESAの役割だと思います。
田中
実際に動き出したプロジェクトの情報は、会員の皆さんに提供して、取り組みを広げていけると良いと思っています。
省庁の壁を超えて—政策領域の重なりから生まれる可能性
野﨑
ESAは、省庁関係者の有志メンバーが多く参画してくれている点でも珍しい組織だと自負しています。
森本
環境省の地域循環共生圏や脱炭素、厚生労働省の地域共生社会の取り組みなど、各省庁の政策で目指すところは、実は似ていると思うんです。
目指す方向が重なるからこそ、異なる省庁の間でも共通言語が生まれる。ESAに省庁メンバーがかかわっていることを活かし、活動を通して政策の近接性や重なりを表現できると面白いですね。
野﨑
本当にそうですね。国の制度の考え方にも、少しずつ変化が生まれてきています。福祉を例に挙げると、これまでは目的や対象者を限定して、そこに対して補助金を交付することが一般的でした。それが少しずつ、より幅広い目的でも活用できるよう変化してきました。例えば、1つの拠点で介護予防と資源循環の取り組みを重ねるなど、領域を超えた活動を重ね合わせがしやすくなってきているのではないかと思います。
蝦名
ESAは、THE BASE構想*を掲げています。公民館や図書館といった地域の拠点で、福祉や社会教育、生産活動など様々な領域の活動のかけ合わせを生み出すことで、持続可能な地域づくりを目指しています。
こういった場では、様々なバックグラウンドや得意分野を持つ人が集まり、共通の目指すところに向かってともに活動していくことになります。そこでは、民間の力を活かすことはもちろん、複数の省庁の制度を組み合わせた事例が生まれていくと面白いと思っています。
野﨑
THE BASEの試行のひとつとして、今、会員自治体である長久手市と一緒に、実証プロジェクトを進めています。テーマは、コミュニティ拠点という地域インフラにおいて、「資源循環の拡大」と「企業人の地域参画」を重ね合わせることで、地域拠点の活性化を実現しようというものです。ここでは既存の活動を活かしながら、福祉、コミュニティ、資源循環といった特定の領域の範囲を超えて、多様な価値の創出を目指しています。
実はこの協働も、テーマが最初から明確にあったわけではなく、模索から始まっています。企画政策課、環境課、地域共生推進課など、複数部署が抱えるミッションや課題の共有からスタートし、検討を進めてきました。今、プロジェクトへの参画企業を募集する段階となり、具体化に向けて動き出そうとしています。
森本
様々な政策を地域で融合させ、そこに企業の力ものせて、地域課題の解決につなげていく。それがESAの目指す姿ですね。
―最後に皆さんがどういった思いでESAにかかわっていただいているのか、一言ずつ頂いても良いですか。
田中
ESAは循環と共生をコンセプトに掲げています。福祉と資源循環とがうまくマッチして地域が豊かになるような取り組みを生み出せたら素晴らしいなと思っています。また、私が環境省の業務で日々かかわっている事業者の皆さんが、新たな資源循環の取り組みにチャレンジできる環境づくりも推進したいと考えています。ESAを通じて相乗効果が生み出せればと思います。
森本
私は、THE BASE構想を通して、人が自然と集まるあたたかい場を地域につくり、コミュニティの再生につなげていけたらと思っています。
蝦名
ESAを介して、省庁関係者同士のご縁も広がっていることを感じ、楽しみながら参加しています。皆が心のどこかで「このままではいけない」と感じていたタイミングで、ESAが生まれたように感じています。
ESAはまだまだこれから。試行錯誤が続きますが、なんとか思い描く事業の絵姿が見えるところまで持っていけたらと思っています。
野﨑
人口減少、高齢化と課題はたくさんありますが、これらの課題に個々に対応するアプローチも重要ですが、それだけだと、地域や社会が「疎」になっていくにつれて、地域の元気がなくなってしまうと常々危機感を感じています。それを乗り越えつつ地域課題に取り組むには、国として皆が乗りやすいような仕組みを整えていくこと、そして現場の実践活動との両輪が必要だと思っていて、その駆動力をESAで生み出したいと考えています。ライフワーク的にこれからもかかわっていきたいですし、この省庁メンバーにもこれからもぜひ力をお借りできると嬉しいです。
ESAは、2026年2月20日にシンポジウムを開催いたします。ESAにご関心をお持ちの方は、ぜひご参加をご検討ください。